いつでもコッコ日和 第5号

コッコ達が最期までコッコであるよう…

今回はお問い合わせのありました廃鶏について書かせていただこうと思います。難しい問題であり、狭い紙面では正確にお伝えできるか心配ですが。

廃鶏とは採卵期間を終えた雌鶏のことで、飼育コスト削減などの経済的理由で処分されます。廃鶏となった鶏は廃鶏処理業者に引き取られ、加工肉や冷凍肉、レトルト食品、ペット飼料、肥料として利用されます。採卵鶏としての役目を終えた鶏達が、最終的に食肉として利用されること自体に問題はないと思いますが、その時期や過程、そして利用率に個人的には思うところがあります。

まずは①廃鶏になる時期です。採卵鶏は一般的には生まれて120日令位で卵を産み始め、しばらくして産卵率90%のピークを迎え、そこから徐々に産卵率は低下し、560日令位で産卵率70%位にまで落ち、この前後に廃鶏として処分されます。採卵鶏は1年半から2年の役目を終えるのです。次に②廃鶏処理業者に処理される過程です。廃鶏は食肉として利用される場合でもその値段より処理費用の方が高いこともあり、処理の優先順位は低く、生きたまま廃鶏処理場にしばらく放置されている状況などがよく報道されたりしています。もちろんこういった状況はごく一部であると思いますが、実際に起こっているという事実はあります。そして③廃鶏の利用率です。昔は採卵鶏も廃鶏にした後は食用にしていました。しかし肉用鶏のブロイラーや地鶏が市場に出回る現在、廃鶏は肉用鶏に比べ産肉性に乏しく、硬く肉質も悪いということで、一部が肉団子やスープ、レトルト食品の材料に利用されるだけで、そのほとんどは産業廃棄物化しているといいます。飼料や肥料としての利用もその処理に手間がかかり採算性が合わずに利用が進んでいないのが実際のところのようです。

平成30年の農林水産統計では廃鶏の全国の処理羽数は8,491万羽強とされています。しかし、その廃鶏がどのように利用されているか、どのように処分されているかという統計の数字がなかなか出てこないのも事実です。できるだけ信頼できそうな情報をもとに書いていますが、しっかりとした公式な情報ではあいませんので、その分差し引いてお読み下さい。

ただ、廃鶏にはアニマルウェルフェアの観点からもさまざまな問題が潜んでいるだろうということ、そしてそれが物価の優等生と言われている鶏卵業界の背景にあるということです。そして大規模化・効率化が進むこの業界のおかげで全国で毎日安定的に卵が供給されていて、それを大多数の方が受け入れて消費しているということです。

そんな中、違う価値観のもとに養鶏を考え直そうという小規模自然養鶏農家が存在し、一部の方々に受け入れられている現状があります。

COCCO相木では粗飼料でゆっくり育てますので160~170日令位で産卵開始、産卵率もピークで70%位で、3~4年かけてゆっくり産卵してもらおうと思っています。それでも2年目の子たちの卵は初年の子たちの卵に比べるとざらつきや大きさなど見た目や殻の状態で劣化が始まっているように感じます。栄養価など中身は変わらないので、ある程度は買っていただくお客様にご理解をいただきながら、また業務用としての利用も考えながら対処していくしかないかなと考えています。

また、3~4年産んでもらったコッコ達のその後の問題もあります。100羽当たり1週間に、緑餌は別として120kg位の餌が必要になるので、ずっと飼い続けるのはかなり難しい問題があります。

生涯飼育という選択肢があります。命をいただくという選択肢もあります。少なくとも廃鶏にして業者に委託してそれで終わり、ということではなく、養鶏農家としてコッコ達に敬意を払い、最期まで責任をもつということが必要なのではないかと、また責任を持てる羽数には限りがありますのでその羽数の範囲内で飼育することが必要なのではないかと思っています。

かなりデリケートな問題で、これを書くことによって少なからず影響が出るかもしれませんが、小さい養鶏業農家が現状を伝え、できることを進めていかないと何も変わっていかないのかな、そのごく一部を担えればいいな、と思ってあえて考えを書かせていただきました。