飼育方法の情報があり購入の選択肢が増える方が良くないですか…?
今回は鶏卵の表示についてのお話しをしたいと思います。
日本では、鶏卵(殻付き卵)の表示として、名称、原産地(都道府県名、市町村名など)、選別包装者(事業者名)、消費期限や賞味期限(加熱加工用の場合は産卵日や採卵日)、保存方法、使用方法などが義務付けられています。パッケージには上記の他に魅力的な写真や売り文句などが印刷され、これらの情報と価格を参考にどの卵を購入するか選んでいるのではないでしょうか。
一方、フランスでは卵の殻にコード番号を押印することが義務付けられています(EU加盟国は多少の違いはありますが概ね同じ基準です)。そのコードとは、①卵を産んだ鶏の養鶏方法、②卵の原産国、③生産者と産卵した鶏舎のコード番号、④推奨消費期限。この4つの情報の他に、付加情報として⑤産卵日を表示することができます。
フランスの日本との一番の違いは①卵を産んだ鶏の養鶏方法です。養鶏方法は“0”~“3”の4つのコードの分類されています。
●コード0=有機卵
すべての飼料が有機農産物であること、鶏が屋外で放し飼いにされていること、鶏舎内に入れる場合は1羽当たりの面積が他の養鶏様式よりも広く鶏の数が限定されていること。
●コード1=屋外で飼育された鶏が産んだ卵
この卵は日中は屋外で、1羽あたり4㎡以上の、大部分が植物で覆われた土地で飼育された親鶏から産まれた卵。
●コード2=地面で飼育された鶏が産んだ卵
ケージ飼いではないけれども、鶏舎から外に出られない鶏が産んだ卵。1㎡の地面に約9羽以下。
●コード3=屋内ケージ飼いによる大規模飼育
屋内の何層にも積み重ねられたケージで歩き回る自由もなく、地面の上に足を置くこともできない状態で飼育されている親鳥から産まれた卵。
アメリカでも表示方法は違いますが、下記のような定義がある程度決められていて、パッケージに該当する情報が印刷されています。
低温殺菌された卵、放牧で育てられた鶏の産んだ卵、USDA(アメリカ合衆国農務省)など政府機関認定オーガニック卵、民間団体(UEP)が認めた農場で採れた卵、ケージ飼いではない鶏の産んだ卵、放し飼いの鶏の産んだ卵、サプリメント等の添加物が一切加えられていない完全なベジタリアンの餌を与えられた鶏の卵、等々。
重要なことは、どのような飼育方法がとられているかが買う段階で選べるような情報が表示されているということ。どのようなカテゴリーを設定するかは議論の余地があるかと思いますが、飼育方法などの情報をもっとオープンにし、消費者が自由に選択できるようになることが今後、必要になってくるのでないかと思います。
日本は世界でも珍しい安心して卵を生食できるほど衛生管理が徹底されている国です。東京2020オリンピック・パラリンピックで日本の卵の衛生管理の優秀さを前面にアピールしようとしたところが、アニマルウェルフェアに基づく飼育方法について基準の遅れが逆にクローズアップされてしまいました。
大手鶏卵業者から吉川貴盛元農林水産相が大臣在任中に賄賂を受け取ったとして在宅起訴されたニュースがありましたが、これはケージ飼いの際にもケージ内に鶏本来の習性である止まり木に止まれるよう設置するよう基準を設定することに対してのことだったともいわれています。
アニマルウェルフェアに基づく飼育方法をどこまで養鶏業者に適用するかはそれぞれ立場のよって意見は違ってくるかと思います。また価格の優等生と言われるほど安定した価格は大規模養鶏業者の努力によってなしえていることもまた事実です。飼育方法を厳しく設定することで卵の安定供給ができなくなることも考えられますので、一概にどうすべきということは言えません。ただ、現在の日本の養鶏業界が世界的に見てどのような状態なのか情報を公開し、また、今購入しようとしている卵がどのような状態で飼育されている鶏が産んだ卵なのか、選択する際に必要な情報を印字することはすぐにできることなのかなと思います。
今回は鶏卵の表示について個人的な意見を書かせていただきました。ちょっと重たい内容になってしまいましたが、養鶏について思うことを今後も定期的に書いていきたいと思います。
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